賞金稼ぎスリーサム!


 母の介護のため刑事をやめた藪下。その彼に、ペットショップ放火事件の調査依頼が舞い込む。
その事件には、報奨金が掛けられていた。そして藪下を指名したのは「警察マニア」の淳太郎という男。
さらに火事現場を不自然に観察する少女と出会ったことで、3人は報奨金のために手を組むことになった。

 3人とも個性豊かだが、「法医昆虫学捜査官」に比べ薄い。
しかし、謎の少女として登場した一花の特技は異彩を放っていた。当初は藪下のいう「表情の乏しい人間は、無意識に敵意を抱かれるし警戒される。」という描写のままの、扱いずらい人間のようで嫌悪感が沸くが、ただ気持ちの表現が下手なのだとわかってきた頃に面白くなってくる。
そして狩猟や罠猟の話は興味深い。
このチームはこれからも続きそうだ。

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賞金稼ぎスリーサム! [ 川瀬 七緒 ]
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アランマフラーと帽子


使用糸 ハマナカフーガ 10玉
 「アラン&ガンジーニット」から
  アランマフラー 284g
  その模様を使って帽子 81g

 「大切に使いたい 手編みの小物」から
  とんがり帽子 72g


写楽とお喜瀬


 江戸で、わずか10か月ほどで姿を消した謎の絵師・写楽。
彼には表だって名乗れないわけがあった。
能役者が本業の十郎兵衛は、非番の時にだけ書くと決め、自身のうちに潜む黒々とした後悔と自責の念を紙にぶつけるように描いていた。
それはこれまで見たこともないような描写で、見るものに衝撃を与える絵だった。

 謎の絵師はどう生まれたのか。なぜ1年もたたずに姿を消したのか。
その強い印象を残す絵はどんな心持で描かれたのか。
その心の内は、強烈に描かれているが、その一端となるお喜瀬が妙に気持ちの悪い書かれ方をしている。
性別ではなく、人となりが。
写楽となった十郎兵衛を描くなら、許嫁となった香都のほうを絡ませたほうが読みたかった。
その違和感が、お喜瀬の気持ち悪さとしてずっと残る。

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写楽とお喜瀬 [ 吉川 永青 ]
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花舞う里


 母の故郷である愛知県の澄川にやってきた潤は、そこで都会とは違う風習に戸惑う。
中でも一番は、花祭りという伝統神楽。
授業でも習うほど、地域の文化として当たり前にあるその祭りが、潤には苦しかった。
 
 『マカン・マラン』の作者だが、郷土史や文化に興味がわかず、いまいち入り込めない。
田舎ならではの風習や人間関係も、特別なことはなにもなく、普通の毎日が描かれている。
それぞれの心の中を丁寧に描いていたマカン・マランとは違い、潤から見た視点でのみの人物像なので、親近感がわかず、祭りの高揚感さえどこか遠く感じてしまう。

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花舞う里 [ 古内 一絵 ]
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亥子ころころ


 武家出身の菓子職人・治兵衛が、出戻り娘のお永、孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。
地方を旅して集めた菓子の覚書を頼りに拵える菓子店は、小さいが繁盛していた。
ある時治兵衛が手を痛め、粉を捏ねるのもままならぬようになった時、まるで呼ばれたようにやってきた行き倒れの男は、菓子職人だったことから、「南星屋」で働くことになった。

 前作は治兵衛の出自が大きな問題となってしまい、やっと皆の心が落ち着いてきた頃に出会った運平。
人の縁を描くのが上手い作者らしい、厳しくも温かい出来事が続く。
今回も出てくる菓子を想像してしばらく手が止まってしまうくらい、魅力的なものばかり。
そして、地元の「塩味饅頭」が出てきので一層うれしくなる。
今後の人間関係にも興味があるが、次はどこの菓子が出てくるかと楽しみになる。

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亥子ころころ [ 西條 奈加 ]
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未来を、11秒だけ


 繁華街でトラブルに巻き込まれた早紀は、シェアハウスのオーナーに助けられ、シェアハウス“FREEDOM TREE
”の住人達と知り合う。
彼らは皆、本名や身元を隠して生活していた。
そしてそのうちの一人であるキャロが突然、姿を消す。
早紀は、特殊な力を持つ知り合いの司と共に、行方不明のキャロを探し始める。

 特殊な力を持った人が、たくさんいる。
そんな世界なのに、その力は意外と知れ渡っていないし、大きな悪さに使われたりもしていない。
おかしな設定が違和感を大きくする。
そして、どこかで読んだような出来事ばかり。

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未来を、11秒だけ [ 青柳碧人 ]
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せき越えぬ


 上司からの指示で向かった箱根の関所で、ある不正をただしたことから縁を得て、小田原藩士・武一は東海道・箱根の関守になった。
厳しい調べがある関所には、毎日のように切実に関を超えたい者たちがやってくる。
武一は、幼馴染の騎市と共に、新しい仲間を得て、関守の仕事に精を出していた。

 人の縁の妙。
いい出会いがあるときは続く。その縁がもたらすものがたとえ悲しい出来事であっても、それは後悔にはならないと強く言われているような物語。
最後まで力強い。
足軽の衛吉が雰囲気を軽く明るくしてくれていて、一番印象に残る人物だった。

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せき越えぬ [ 西條 奈加 ]
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怪談飯屋古狸


 奉公先を自ら「追い出されてきた」虎太。
偶然見かけた看板娘・お悌に惹かれて入った飯屋「古狸」で、虎太は不思議な取引をする。
それは、怪談話をすれば一食タダ。
お悌と飯に釣られ、虎太は幽霊が出るという家に潜り込む羽目になる。

 これまでのシリーズと同じようなテイスト。
ボケ方もそっくりなので、新しくする意味があるのかわからない。
今までの、動物や子供といったかわいらしく雰囲気を和らげるものが減った分、面白みも減った感じ。

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怪談飯屋古狸 [ 輪渡 颯介 ]
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菊花の仇討ち


 北町奉行所の同心・中根興三郎は、姓名掛というお役目のため、ほかの同心と違い暇をたくさん持っている。
そんな興三郎の生きがいは、変化朝顔の栽培。
ある日、古手屋の表につられている小袖に目を奪われる。
見事な変化朝顔が描いてあった。

 普段は無口なのに、好きなことなら途端に周りがうんざりするほど口が回る。
そんな興三郎が、朝顔にかかわる悲劇や、ときに悪事に出くわす。
大きな地震の後の設定のせいか、悲しい話が多かった。
朝顔の話はとても興味深いが、そのせいか主人公の人柄の印象が薄くなった。

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菊花の仇討ち [ 梶 よう子 ]
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ばけもの好む中将 八 恋する舞台


 帝に舞を披露したことで注目され、突然「モテ期」が到来した宗孝。
返事をしようにも、苦手な和歌に四苦八苦していると、中将宣能から「妹にみてもらえばいい」と言われる。さらに、九の姉が振り付けた桜の舞で大成功を収めた専女衆は、次の舞の準備を始めていた。

 このところ、専女衆の話が多くて飽き気味。同じような話となってしまっている。純粋に中将が不思議を探すことがメインではなくなってしまった。ただ、登場人物は相変わらず個性的で、初草の様子もほのぼのとしてかわいい。