2015年07月10日 読了
体格はいいのに気の弱い同心・中根興三郎は、朝顔を育てることが生きがいだった。
夢は、黄色い朝顔を咲かせること。
興三郎の朝顔好きから巡り合う人たちは皆、信頼できるいい人ばかりなのに、それぞれが信じる正義の前で起こる悲劇に、何もできない興三郎は苦しむ。
やがて起こる桜田門外の変。興味深い登場人物ばかりだが、史実が描かれ始めると急に失速したように個性が消えた。興三郎の人生を中心に描いてほしかった。
|
読書と手芸の記録
2015年07月10日 読了
体格はいいのに気の弱い同心・中根興三郎は、朝顔を育てることが生きがいだった。
夢は、黄色い朝顔を咲かせること。
興三郎の朝顔好きから巡り合う人たちは皆、信頼できるいい人ばかりなのに、それぞれが信じる正義の前で起こる悲劇に、何もできない興三郎は苦しむ。
やがて起こる桜田門外の変。興味深い登場人物ばかりだが、史実が描かれ始めると急に失速したように個性が消えた。興三郎の人生を中心に描いてほしかった。
|
2015年07月07日 読了
作家志望の英国青年ユージンは、経済界では大物の父を持ち、その跡継ぎとしての修行を嫌がってパリにやってきていた。
そこで出会った黒い服ばかり着ている探偵や、一目ぼれした踊り子と共に、呪われた宝石“ディープ・レッド・ハート”を探し出す。
夢のような物語が『小説』という設定で描かれている。いつものひたすらやさしい語り口とは違ってさっぱりしているので読みやすい。
どこまでが思い出話かを想像するのも楽しいかもしれない。
個性的で解り易いキャラクターばかりなので割と小さい子でも楽しめそう。
|
2015年07月05日 読了
キャバクラのスカウトマンをしている晶彦。ある日、スカウトした女の子の一人、麻衣が子供を残して姿を消した。
麻衣を探し始めた晶彦は、麻衣の元夫や関係者を探るうち、もう一つの誘拐事件にいきつく。
それを解決しなければ、麻衣は見つからない。晶彦は誘拐された子供のために走り回ることになる。
『オリンピックの身代金』と似た読み応え。
最後に残る犯人に、こんなゲーム感覚の脅しが考えられるのかと疑問に思うこともあったが、後半で増すスピード感が違和感を薄れさせる。
|
2015年07月03日 読了
夫を何者かに殺された藍染屋のおかみ・環。
犯人はきっと商売敵の東雲屋だと信じた環は、毎日のように店に押しかけ、その店の主人へ白状するよう迫っていた。
さらに環は、東雲屋で働く者に恨みを持つ人と出逢い、仲間に引き入れていた。
4人の女たちは信頼し合っていたが、やはり隠していることもあり、決して騙すわけではないはずなのに、なぜか言えないままそれぞれが策略をめぐらす。
悲しい話も多かったけど、ある意味思いもよらぬ結末で、予想通りすべて丸く収まる。
|
2015年06月27日 読了
平家が滅びる時に巡り合わせた者たち。
女院らとともに西海に逃げた松虫と鈴虫の姉妹、流罪で鬼が島と呼ばれる島へ流された都人と島の娘との交流など、女たちの目から見た平家滅亡。
古い書物の様な言葉が、意味をたどるのに戸惑うこともあるためゆっくりとしか読めなかったが、噛みしめるように語られる女たちの心があらわされているようでちょうど良かった。
|
2015年06月22日 読了
未練を持って死ぬと鬼となり、水は汚れ、井戸は錆び、やがて水源は枯れてしまう。
そのものの未練を断ち切り、黄泉へと旅立たせる役目を負ったのは二人。一人は夜目が利き、一人は鳥目である。
不思議な一族の因縁を嫌い、医者になって目の研究をするのだという若者がいた。
だが、水が濁ったと電報を受け取れば飛んで帰ることになったのは、もう一人の役目の者と顔を合わせてしまったからだった。
神話の世界に閉じこもったままのような一族。どこかで大事に隠されているものを見たような気分になる。
|
2015年06月17日 読了
人より優れた能力を持つ人たちは、いる。
強力な帯電体質のため、電化製品が家に置けず、常にアースしていなければいけない少年や、明日の惨事が見える少女、それぞれは孤独で、自分の力に困っていた。
大学で超心理学を研究している飛島潤は、そんな人たちに会い、記事にしてきた。
現実にそんな力があったらさぞ生きにくいだろうと思う出来事でいっぱい。
超能力という言葉にすると胡散臭くなるが、本当だったらこんなことが起こるのかと思えてくる。
|
2015年06月17日 読了
父とそりが合わず、家を出て賞金首を捕らえて金をかせぐ浪人となった渡辺条四郎は、その腕と獲物を見つける能力の高さで『鷹の目』という二つ名で有名になっていた。
寺の僧に化けて泥棒に入る物、村の水盗人の身代わりにさせられるはずの男など、様々な事情で追われるものを見つけ、できれば生きたまま捕らえるのが信条。
ことさら犯人の事情を汲んで同情したりはせず、死なない程度に容赦はしない条四郎。
そのあたりの他人への冷たさがうまく書かれている。
その行いが母の敵へと繋がっていくまで。
|
2015年06月09日 読了
警視庁捜査一課刑事の宇田川は、女性殺害・死体遺棄事件の捜査をしていたが、一向に進展しない。
一方で、他の事案の立てこもり犯が人質の交換に応じ、宇田川の同期である女性警察官と共に逃走した。
二つの事件に妙な引っ掛かりを覚えた宇田川が思い悩んでいた時、見計らったようにもう一人の同期から電話が入った。
裏の事情に振り回される現場と、それを感じて独自に動き出す宇田川。
リアルすぎる刑事ものはすぐに忘れてしまうから、これくらい大げさなほうがかえって興味を引く。どこで繋がってどこがシナリオを描いているのかと想像するのが楽しかった。
|
2015年05月15日 読了
日本橋本石町にある、通称“やさぐれ長屋”と呼ばれる弥三郎店。
そこで暮らす人々のちょっとした出来事が順に綴られ、やっかいで愛しい人間関係を紡ぐ。
そろそろ嫁取りを考えている男が気になったのは気が強い出戻りの娘。突然言い寄ってきて勝手な思い込みで結婚を迫る男。仲の良い夫婦の旦那の方が実は寄場帰りだという噂が立つ。。。
人のなすこと思うことは、いつの時代も同じ。
いろんな立場から見ても、やっぱりそれは変わらない。
江戸が舞台の話ではあるけど、妙にリアルですとんと馴染む。
|