本格的―死人と狂人たち


2018年03月29日 読了
 数学科助教授の増田は、異常な興奮状態に陥ると天才科学者に変態するという奇妙な性質を持つ。
そして今の研究テーマを「覗き」によってデータを集めようとしていた。
自分の研究室の女生徒の部屋を覗き、その性生活を記録するという、おそらく誰にも理解されないであろうフィールドワークで。

 変態さが際立っているせいか、気持ち悪さはない。そしてそんな性質のせいで事件に遭遇しても身の潔白を証明し辛いというコミカルな部分が、増田を憎めないキャラクターにしていた。
二つ目の話も、最後まで意図がわからず、普通に講義としても興味深かった。
ただ、最後の補講については蛇足の様な気がして興醒めしてしまった。

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異常探偵 宇宙船


2018年03月24日 読了
 異常な事件を専門に扱う探偵、「宇宙船」。
彼女は常に頭巾をかぶり、頭の中に流れ込んでくる雑多な声から身を守っている。
そんな中、小児性愛者の女性「苺さん」が自殺する。
自殺を疑う同じ趣向を持った「お嬢さん」は、宇宙船に捜査を頼むが。

 奇怪なことが淡々と、空々しく描かれている。
探偵自身も、その部下も、周りの連中も、おかしな言動で周囲を煙に巻き、うんざりしながらも慣れてきた頃に解決する。
結局何だったんだと思わせることが目的?

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死と砂時計


2018年03月21日 読了
 国の政策として、死刑囚を集めて収監し、死刑まで行う終末監獄をビジネスにしたジャリーミスタン首長国。
そこに収容されたアラン青年は、老囚シュルツの助手となって、監獄内の事件の捜査に携わることになる。

 脱獄不可能なこの監獄からただ一人逃げ出した囚人を追うために街へ出かけたり、死刑前日に独房に入っていた囚人二人が惨殺されたりと、物騒な話ばかりだけど、鬱々とした雰囲気はなく、最後まで興味が薄れず楽しめた。
最後まで驚きが待っていたが、主義や考え方が違う人の気持ちを推し量るのはとても無理なのだとうすら寒い気持ちになる。
それでもイヤミスではなく、シリーズだったらぜひ読みたいと思えた。

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誰かが足りない


2018年03月18日 読了
 予約がとれないという噂のレストラン「ハライ」
そこに10月31日午後6時に集まっていた客たちの、それぞれの物語。

 レストランでの話はなく、そこに集うまでの、人々の都合。
心の中に何かが足りないと感じている人たちの話だけど、なんだかあんまり現実味がないものもあり、薄いイメージしか残らない。
評判の味についてや全体を見渡した様子など、レストランそのものの描写がほぼないので、繋がりもほとんど感じられずタイトル通りにどこか物足りない話だった。

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カラスの親指


2018年03月12日 読了
 詐欺を生業としている男が、自分をどん底に突き落とした者たちを壮大なペテンにかける。
中年男二人で組んで詐欺を働いていたら、ある時そこに少女が加わる。
いつの間にか5人と1匹になってしまった同居人は、自分たちの今後をかけて最後のペテンを仕掛けようとして。

 暗い話で始まったため、なんだか憂鬱な気分で読み始めたら、同居人が増えるに従い明るくなる。
主人公が悪者になり切れない言動で同情を誘うし、同居人はポンコツに見えてしょうがないし、どんな結末になるのかハラハラした。
そして思いもつかないラストとなるが、ちょっと都合が良くいきすぎじゃないかと思うようなことも、想像できていなかったせいでなるほどという思うの方が強く残ったために良い読後感となった。

月の砂漠をさばさばと


2018年03月05日 読了
 9才の女の子さきちゃんは、お母さんと二人暮らし。
二人が大事に過ごす毎日を、かわいいイラストと共にふわっと綴る。

 二人を柔らかく優しく包む空気にほっとする。
寝る前の少しの物語、聞き間違いで大笑いしたり、何気ない出来事が、イラストの穏やかさでさらに優しい気持ちにしてくれる。
ちょっとした小話がいくつも集まっているので、何かの待ち時間に少しづつ読むのに最適。

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ハケンアニメ!


2018年03月05日 読了
 アニメ制作の現場で起こる、悲喜こもごも。
9年ぶりの天才監督が、アニメ連載中に逃げ出した!
なんとか探し出さないと、大変なことになる。
そして同じクールには、期待の新人監督が描くアニメが注目されていて、果たして今クールの覇権を取るアニメはどれだ!

 威勢が良く、慌ただしく、地味だけど心を打つ仕事。
アニメ制作に関わる、監督やプロデューサーだけではなくて絵師も全部ひっくるめた、アニメの世界。
勢いがあってするする読めるけど、そのうちその流れはどうにもこちらの感情の揺らぎをどうにかして増幅させようとだけを狙っているように思えてきて重くなる。
無理やり感動させようとするみたいな、有川浩と似ていて最後はげんなり。

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レジまでの推理 本屋さんの名探偵


2018年02月27日 読了
 本屋さんの仕事は結構肉体労働。
亡くならない万引きに不況、本離れの若者などなど、問題はたくさんあるけど、やっぱり本が好きな人たち。

 本屋にやって来る客たちが憂い顔だと気になってしまう。そんな店員がいくつかの謎と問題に行き当たる。
ちょっとしたヒントから犯人や真相を突き止めてしまう「店長」はたしかに不思議で面白いけど、それ以外は特徴的な人も出来事も特になく、終わったらさらりと忘れてしまう。代替わりした「店長」の話の時系列が並び順ではないので「今のは何だったんだ」という気分にさせられ、余計にイライラして好感度減。

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往復書簡


2018年02月24日 読了
 高校教師の敦史は、小学校時代の恩師の依頼で、彼女のかつての教え子6人に会いに行く。
手紙のやり取りだけで綴られる、過去の事件。

 最後はそれなりに意外な面もあって、なるほどと思うところもありけど、やはりそこは湊かなえ、なんとなく後味が悪いし話が終わった感じもしない。
そのままの雰囲気のまま次の話へと変わるから、話が続かなくて違和感があるまま進み、またモヤモヤしたまま終わる。
満足感は全くない。

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鶏小説集


2018年02月19日 読了
 鶏に絡めた短編集。

「肉小説集」と同じような構成のはずだけど、「肉」に比べてこちらは嫌な気分になる物もあり、物足りないものもあり、納得いかないものもありと、なんだか煮え切らないものばかりだった。
 「肉」では出てくる料理もとても美味しそうで楽しかったが、こちらは内容の暗さに引きずられて美味しそうに感じない。
後味の悪さが大きかった。

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