桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介


2015年04月15日 読了
 御薬園同心・水上草介は、武士ではあるが植物好きで、ひょろりとした体躯のせいで『水草どの』と呼ばれていた。
そんな草介は、御薬園を預かる芥川家の娘・千歳さんに縁談が持ち上がったとたん、すべてが上の空になった。

 『柿のへた』の続編。
威勢のいい千歳に言い負かされてばかりで、人より一拍二拍反応が遅いと言われても反論の怒りもわいてこないほどのんびりした草介の考えは、そんな見方もあるのかと感心することが多い。やっと自分の道を見つけた彼の行く末が楽しみである。

バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達


2015年04月13日 読了
 熊本・天草において、真夏日に大雪が観測され、空に巨大な十字架が浮かび上がった。
目撃したのは多数で、嘘はないように見えた。しかも天草は、隠れキリシタンの信仰があった場所。
平賀とロベルトは奇跡調査へやってきたが、そこで二人は土着の宗教と結びついてすでに違うものとなっていたキリスト教と出会う。

 とうとう舞台は日本へ。歴史や政治まで絡んであちこちの権力が動く地である天草で、二人はどのような結論を出すのか。
毎回、ロベルトの知識と能力が魅力的で、生真面目な平賀をどう導いていくのかが楽しみだった。今後はそれにシン博士も加わることになりそう。

何が困るかって


2015年04月09日 読了
 少しの時間でちょっとずつ読める、小さなお話の集まり。

 不思議なことや、怖い事、力が入ったり、美しかったり。
どちらかというと後味の悪い話が多いけど、色んな場面の色んな思いが次々とやってくるので、次の話でキャンセルされたりするから思いのほか悪くは残らない。

 坂木司の本としてはちょっと異色な気がするけど、近頃こんな感じのイヤミス系が増えてきたので手に取るのに躊躇する。

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何が困るかって (創元推理文庫) [ 坂木司 ]
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甘いもんでもおひとつ


2015年04月07日 読了
 天才肌の父が作った菓子屋を伯父に取られ、身一つで追い出された兄妹で営む菓子屋『藍千堂』。
小さい店ながらも繁盛し、事あるごとに言いがかりをつけてくる伯父と対峙しつつ、とびきりのお菓子を作る。

 身内の人間関係に困らされながらも、人々に喜んでもらえる菓子を作り続ける兄弟。
最後には伯父との確執が語られ、どちらも意地を張りつつそこは身内で、なんとなく好敵手になる。
色とりどりの菓子さながら、いろんな感情が湧き出てきて、さらに美しい菓子も食べたくなり、そして和菓子のほっこりとした後味が残るような読後感。
表紙は地味だがサブタイトルは美しいのも仕掛けか。

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甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺 (文春文庫) [ 田牧 大和 ]
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下戸は勘定に入れません


2015年04月04日 読了
 大学准教授でバツイチの古徳は、特殊な体質を持っていた。
いくつかの条件が重なった時、過去にタイムスリップしてその様子を眺められるというもの。
ある日、28年ぶりに再会した友人と呑んでいる時にそれが起こってしまい、古徳は友人の苦しい秘密を知ることになる。

 死ぬまで秘密にしようと決心する人たちと、それを知らぬふりをする人たち。
最後はどうも煙に巻かれたような気がするが、絡み合った運命は絆も生む。

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人魚姫 探偵グリムの手稿


2015年04月01日 読了
 デンマークのとある町、11歳の少年ハンス・クリスチャン・アンデルセンは、絵描きだというおかしな恰好をした男と、人魚だという美しい女に出会う。

 童話『人魚姫』で、泡になって消えた末娘が愛した王子が殺された。
犯人は消えた末娘だという噂が広がり、ハンスは人魚の姉たちと犯人捜しをすることに。

 納得がいくようないかないような終わり方をした元の『人魚姫』から、もっと闇の部分を濃くしたような物語。思ったよりすんなりと受け入れられる。

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GOSICK BLUE


2015年03月31日 読了
 一弥の故郷でやっと再開した二人が新大陸へ向かい、その記念すべき第一日目に出くわした命がけのパーティ。
 
 『RED』ではすでに探偵をやっていたヴィクトリカだが、『BLUE』はそのきっかけとなる出来事に巻き込まれたお話。
日本を離れ、ボロボロになりながらもやっとたどり着いた新大陸で、ヴィクトリカと一弥はある一族の過去と対決する。
 しかし今回はあまり推理もなく、最後は一か八かの賭けに命を賭けるしまつで、スケールは大きいが内容はそれほど大きくはなかった。
 多用されるゆるい会話の描写がやけに幼稚でうんざりする。

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悪足掻きの跡始末 厄介弥三郎


2015年03月26日 読了
 旗本都築孝蔵厄介・弥三郎。
兄の家族に一生厄介になって生きるか、立身して己の力で生きるか。

 自由を求めた弥三郎は、運がなく、仕事を見つけてどうにか嫁取りができたというのに、すぐにすべてを失ってしまう。
報われない結末だが悲壮感はなく、自分を見つめ続けて生きた弥三郎は、充実した人生だったのではないかと思える。

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いつもが消えた日


2015年03月25日 読了
 もと芸者で粋なお蔦さんと一緒に暮らす中学生の滝本望。
ある日、友人たちと望の家で食事をして送り出した後、友人の後輩・有斗が血相を変えて助けを求めてきた。

 人生の大先輩であり、肝の据わった思慮深い祖母との生活で満たされていた望が、突然とんでもないことに出くわす。地域みんなで心配し、力を貸し、取り戻すまでの様子は、小路幸也の小説に似ている。
お蔦さんのキャラクターが軸であるはずなのだが、ちょっと存在感が弱い。

小旋風の夢絃


2015年03月22日 読了
 盗掘で生計を立てている男に拾われて墓荒らしをしていた十五歳の少年・小旋風(しょうせんぷう)は、ある日美しい少女の墓で一つの琴を見つける。
ところがその琴を掴んで脱出しようとしたとき、落盤事故で養父は死んでしまい、自由になった小旋風は琴を売って貧困から抜け出そうと、様々な策を練る。

 いつしか国のトップを決める争いに、その琴と共に巻き込まれる小旋風。
小柄で身軽という設定の小旋風にぴったりの軽やかな語り口で、なじみのない名前や表現などに流れを止められることなく読めた。
 最後の大勝負にはもう少し情景描写があっても良かったなと思うけど、名前の通りつむじ風のように終わる。
 ただ、結局その琴の事、生きた死体である少女の事、それにそっくりの猛縶の外見については謎のままで、読み終えた後も不思議な余韻が残る。

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