火花


2015年07月18日 読了
 お笑いを目指す若者・徳永が、ある時出会った先輩・神谷の弟子にしてもらう。
神谷は奇天烈な思い付きで天才的な笑いを生み、その哲学にも信念がある。そして神谷は弟子になった徳永に「俺の伝記を書け」と命じる。

 神谷の人柄に嫌悪感がぬぐえず、前半はさして面白くもないまま進む。
しかしそのうち、神谷という、お笑いには天才だけどそれ以外はクズな人の頭の中を表現する面白さが出てくる。
そして自分の意志で言いなりになる主人公が、自ら奈落へはまり込む神谷をそのまま見つめる。

 古典的な表現が読みにくさを誘うかと思ったが、引っかかるところもなく集中でき、後味もさっぱりしていて短時間で読める。

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ばけたま長屋


2015年07月15日 読了
 指物師の弦次は、一人立ちするために店賃の安い長屋を見つけ、引っ越してきた。
ところがそこは、幽霊が出ると言って住人がほとんど出ていった長屋だった。

 怖い話が大嫌いな弦次だったが、同じく越してきた絵師の朔天のために幽霊を探す羽目になり、唯一の先住者である三五郎と共にあちこちの幽霊に会いに行くとこになってしまう。

 いくつかの幽霊の話が、事情が分かってくるとだんだんつながり、やがてはすべて綺麗にまとまっていく。怖い話だけどほのぼのとした雰囲気が流れていている。

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バチカン奇跡調査官 独房の探偵


2015年07月14日 読了
 天才的な頭脳が悪魔の所業をなしとげる。その少年・ローレン・ディルーカは、13歳で独房に入れられていた。警察に協力し、本人の知らぬ間に自分に協力させながら、すべては計算されていく。

 ローレンが平賀の友人になる前の話や、魔女と畏れられた人の手記に興味を持ち、作家希望の女性と共に『魔女のスープ』を再現させようとしたロベルトと平賀の話など、いくつかの短編集。
 一つ一つ細かく検証していく平賀の科学的な説明が興味深い。

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一朝の夢


2015年07月10日 読了
 体格はいいのに気の弱い同心・中根興三郎は、朝顔を育てることが生きがいだった。
夢は、黄色い朝顔を咲かせること。

 興三郎の朝顔好きから巡り合う人たちは皆、信頼できるいい人ばかりなのに、それぞれが信じる正義の前で起こる悲劇に、何もできない興三郎は苦しむ。

 やがて起こる桜田門外の変。興味深い登場人物ばかりだが、史実が描かれ始めると急に失速したように個性が消えた。興三郎の人生を中心に描いてほしかった。

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踊り子と探偵とパリを


2015年07月07日 読了
 作家志望の英国青年ユージンは、経済界では大物の父を持ち、その跡継ぎとしての修行を嫌がってパリにやってきていた。
そこで出会った黒い服ばかり着ている探偵や、一目ぼれした踊り子と共に、呪われた宝石“ディープ・レッド・ハート”を探し出す。

 夢のような物語が『小説』という設定で描かれている。いつものひたすらやさしい語り口とは違ってさっぱりしているので読みやすい。
どこまでが思い出話かを想像するのも楽しいかもしれない。
個性的で解り易いキャラクターばかりなので割と小さい子でも楽しめそう。

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月の見える窓


2015年07月05日 読了
 キャバクラのスカウトマンをしている晶彦。ある日、スカウトした女の子の一人、麻衣が子供を残して姿を消した。
麻衣を探し始めた晶彦は、麻衣の元夫や関係者を探るうち、もう一つの誘拐事件にいきつく。
それを解決しなければ、麻衣は見つからない。晶彦は誘拐された子供のために走り回ることになる。

 『オリンピックの身代金』と似た読み応え。
最後に残る犯人に、こんなゲーム感覚の脅しが考えられるのかと疑問に思うこともあったが、後半で増すスピード感が違和感を薄れさせる。

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四色の藍


2015年07月03日 読了
 夫を何者かに殺された藍染屋のおかみ・環。
犯人はきっと商売敵の東雲屋だと信じた環は、毎日のように店に押しかけ、その店の主人へ白状するよう迫っていた。
さらに環は、東雲屋で働く者に恨みを持つ人と出逢い、仲間に引き入れていた。

 4人の女たちは信頼し合っていたが、やはり隠していることもあり、決して騙すわけではないはずなのに、なぜか言えないままそれぞれが策略をめぐらす。
悲しい話も多かったけど、ある意味思いもよらぬ結末で、予想通りすべて丸く収まる。

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四色の藍 [ 西條奈加 ]
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狼のようなイルマ


2015年06月30日 読了
 都内で毒殺死体が発見される。違う場所でも、また違う毒による殺人が起こり、イルマは二つは関係があるのではないかと考えた。それは身元不詳の『蜘蛛』と呼ばれる男の仕業だった。

 血の気の多い、元交通機動隊の検挙率No.1女刑事・イルマが、上司からの命令もおおよそ無視して突き進む。

 10年温めてきた作品だと言うが、「クロハ」シリーズそのまんま。
パラレルワールドか、設定を流用したか、関連作品かというくらいそっくりで、新鮮さも面白みも全くない。

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狼のようなイルマ [ 結城充考 ]
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源平六花撰


2015年06月27日 読了
 平家が滅びる時に巡り合わせた者たち。
女院らとともに西海に逃げた松虫と鈴虫の姉妹、流罪で鬼が島と呼ばれる島へ流された都人と島の娘との交流など、女たちの目から見た平家滅亡。

 古い書物の様な言葉が、意味をたどるのに戸惑うこともあるためゆっくりとしか読めなかったが、噛みしめるように語られる女たちの心があらわされているようでちょうど良かった。

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源平六花撰 (文春文庫) [ 奥山 景布子 ]
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八万遠


2015年06月26日 読了
上王が統べる島国「八万遠」は、いくつかの州に分かれていた。
それぞれの州で小さな争いはあれど、おおむね平和な世が流れていた頃、一つの州で豪胆な長男が謀反を起こし、弟を切り殺し、父を幽閉した。
まるで平和に飽いたかのような所業から始まる、八万遠全土を巻き込む嵐。

 州ごとの風土や信仰が解り易く区別されていて、知っている地名はあっても全く違う土地の事なのに馴染みやすい。
これで終わりというよりこれから物語が始まるかのような終わり方で、まだ序章ではないかと思えるほど。続きが気になる。

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八万遠 (新潮文庫) [ 田牧 大和 ]
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