はしからはしまで: みとや・お瑛仕入帖


2018年11月23日 読了
 店内どれも三十八文。
兄妹で営む『みとや』だったが、突然、兄の長太郎がフグにあたって死んでしまう。
一人になっても食べていくためには店を続けなければならないと、妹のお瑛は、兄の廻っていた仕入先を巡ることにした。兄の話を聞かせてもらいながら。

 主要人物の一人が死ぬというのは、とても喪失感が大きい。
それでも仲間に恵まれたお瑛の姿が頼もしく、知らなかった兄の一面も見れて新鮮だった。

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ミステリー・アリーナ


2018年11月16日 読了
 毎年年末に行われる国民的娯楽番組《推理闘技場》。
新たにできた法律を支える文字通り命を賭けた戦い。
10回目の今回は、キャリーオーバーで20億円の賞金という、知を尽くして生き残る番組に予選を勝ち残ったのは、ミステリーオタクたち。
まだストーリーが読み上げきれてない時から一度きりの回答権を使いながら推理していく。

 死ぬか20億かの選択で、ハラハラしながら読み進める。
でもだんだん胡散臭くなってくる。
それでもカラクリがわからず、どうなってしまうのかと興味をそそられるばかりで、予想もつかない。
残酷な話ではあるけど突飛すぎて感情移入もできず、そのおかげで壮大な仕掛けのあるミステリーを楽しめた。

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サーチライトと誘蛾灯


2018年11月11日 読了
 公園の治安維持のため見回りをしていたボランティアの吉森は、そこでテントを張ろうとしている怪しい人物と出会う。
その人物は魞沢と名乗り、どうにも会話がかみ合わない。
 そして見つけた他殺体と周りの状況から、魞沢は一つの答えを導き出した。

 虫を探してあちこち旅をしている魞沢が、そこで起こる事件に巻き込まれ、とぼけたやり取りから真実を見つけ出す。
魞沢の軽さがトントンと物語を進め、重苦しい雰囲気を作らない。
どんなに苦しい状況に置かれた人達の中にいても変わらないため、読んでいても苦しい思いをせずに済む。

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死神刑事


2018年11月07日 読了
 「警視庁の方から来ました」
詐欺が良く使う口癖でやって来る『死神』。怪しすぎるのに、優秀。

無罪が確定した事件の再捜査をするためやってきたその男は、『死神』と噂されていた。そして『死神』と一緒に捜査した警察官はもう行き場がないと。

 警察が捜査して捕まえた犯人が無罪となるということは、警察の失敗ということ。それを再捜査するのは警察にとっては負けで、『死神』は疎まれていた。
しかしその男は、事件にかかわった刑事一人を相棒に選び、再捜査したあげく置き土産までおいていく。
『笑うセールスマン』的なブラックユーモアが面白い。
悪い噂の割に、誰も不幸にはなってないし、事件の真犯人も見つかる。
サクサク読める軽い文体で痛快な短編集。

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悪玉伝


2018年11月01日 読了
 大坂の炭問屋・木津屋の主の吉兵衛は、家業を放って放蕩を尽くしていたが、ある日兄の訃報が伝えられた。
すぐさま実家へ向かい、我が物顔の番頭を抑え葬儀の手はずを整えるが、それがお家騒動にまで発展してしまう。

 最初から不穏な気配が続き、ずっと胸の悪くなるような出来事で一向に解決しない。最後には罪人となってしまう吉兵衛。
主人公の吉兵衛の視点からは悪人には見えず、混乱させられた。
辰巳屋騒動と言えば有名なようだが、ちっとも知らなかったせいであまり熱中できず、感情移入もできなかった。
お瑠璃の様子がもっと知りたい。

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半端者—はんぱもん—


2018年10月28日 読了
 ススキノシリーズ『探偵はバーにいる』の俺が、まだ大学生だった頃の話。
学校にはほとんど行かず、3件の家庭教師と英語のゼミ、それに高田に習い始めた護身術の他は毎晩飲み歩いていただけの俺が、ある日であったフィリピン女性に恋をした。

 まだ探偵を始める前、何をしたいとも思わず、ただその日の金を稼ぎ、飲み歩いていた俺がだらだらと暮らしている様子がかかれているため、本当にただだらだらと続く。
フィリピン女性との恋も、終わりに差し掛かってやっと出てくるような、メインではない話。
この後、果たして俺はどんな思いがあってススキノで探偵を始めるのか。
その決意までは書かれていなかった。

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消えた少年


2018年10月24日 読了
 学校ではわざと悪い点を取ったりする問題児だが、映画好きで頭のいい少年・翔一と知り合った俺。
しかし、翔一の親友が惨殺死体で発見され、翔一も行方不明となった。
俺は、翔一の担任の春子に頼まれて彼を探すことにした。

 殺された少年の状態のひどさに息をのみ、これは絶対ヤクザの仕業だと思わせながらも、いくら探してもつながってこない。
最後にわかる理由が恐ろしすぎて、久しぶりのハードボイルドに飲み込まれた。
映画の印象が強いため、大泉洋の顔がどうしても浮かんでくる。
そのおかげで、痛い場面でもちょっと気が抜ける緩さがあって面白かった。

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解決まではあと6人―5W1H殺人事件


2018年10月23日 読了
 平林貴子と名乗る女が、興信所をはしごしては変わった依頼をしていく。
それぞれの興信所で解った事実が何を意味するのか。
それがわかるのは平林貴子だけだと思っていた。

 すべての依頼内容がわかっているから繋がって来る出来事。
でも一つしか知らない者たちにはわけがわからない出来事。
どんどん疑問が増え、興味も増えるが、作者らしい読みやすさでサクサク進む。
でも最後は、どんな探偵でもわからないだろう。
だって伏線がなかったから。予想できるわけがない。
意外性があってずるいと言うのとは違う。
こじつけにすら思える狡さで興醒めした。

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無暁の鈴


2018年10月19日 読了
 武家に生まれたが、妾腹だったために疎まれ、寺に預けられた久斎は、大事に思っていた娘の死を受け入れられず、寺を飛び出した。
その後に出会う人たちとの暮らしで、久斎は無暁と名乗り、波乱万丈の人生を生きる。

 寺を飛び出した後、出会った万吉と暮らした日々があっという間に終わってしまい、残りはいったい何の話だろうといぶかしんでいたが、そこからはもっと濃い人生となった。
苦しい生活、ひどい天災や飢饉が長く語られるが、一番印象的だったのはイナゴの群れだった。
虫にすらなすすべもないとは、悲しさが残るばかり。
最後は若い頃の彼とは別人のように人が変わる。
でもやっぱり悲しみが募る。

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トッカン 徴収ロワイヤル


2018年10月14日 読了
 税金滞納者に日々納税指導を行なう、国税徴収官。
鬼の鏡トッカンについて悪質な滞納者へ立ち向かう日々。
そんなぐー子も入局5年となり、税大研修での怒涛の課題の中で鏡トッカンと経験したことを発表すると、引かれるほど驚かれる。

 国家公務員なのに、入局後にまた学校へ入る?
知らなかった。厳しそう。
どんな滞納者にも毅然と立ち向かう姿は今までも描かれていたけど、今回も刺激的で衝撃的だった。

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トッカン 徴収ロワイヤル [ 高殿 円 ]
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