翼竜館の宝石商人


2018年10月10日 読了
 1662年アムステルダム。
海抜が低く、常に浸水と闘っている土地で、宝石商人ホーへフェーンがペストで死に、すぐさま埋葬された。
しかし翌日彼は、自宅の金庫室で窒息寸前で発見される。
画家レンブラントの息子ティトゥスと、記憶を失ったナンドは、その事件に巻き込まれる。

 不思議な世界の話のよう。
湿気と闘いながら、記憶がない事すらもあまり気にしていないナンドが、あっけらかんと生きている様子が、とても面白い。そして次々と興味をそそることが起こる。
表紙の様子から、ペスト医師と外科医たちの人体解剖にかかわる話かと思ってたら、全く違う方向へ誘われていく。
最後ナンドはどうなったのかがとても気になり、しばらく考え込む羽目になる。すっかり取り込まれていた。

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破蕾


2018年10月05日 読了
 旗本のところへ使いに出たお咲は、そこで恐ろしい話を聞く。
「市中引廻し」の刑となった女の身代わりを受けることになったという。
あまりの羞恥に気も失わんばかりだったお咲だが、塗られた薬のせいもあり、しだいに箍が外れていく。

 図書館で借りた本には表紙がついていなかった。
不思議に思いつつも読み始め、もしかしたらあまりの刺激の強さに外されたのではないかと思っていたら、少しもおかしなところはない様子。
 女の受ける刑が、女であれば少し違和感を抱くだろうと思う。
でもその様子や気持ちの移り変わりが丁寧に書かれていたためにそれほど嫌悪感は生まれない。
その事件に絡んだ女たちがそれぞれ貫いた人生が、熱に浮かされたように描かれていた。

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後ろ傷


2018年10月03日 読了
 北海道で一番レベルの低い大学に通う省吾は、ある日学友がヤクザから追われているのを見てしまう。
慌てて警察に駆け込んだが、なんと警官は皆見て見ぬふりで、省吾たちは派出所内でヤクザに暴力を振るわれる。

 ススキノで探偵をするあの二人も登場するのだが、しつこく蘊蓄を語る疎ましい存在として書かれていた。
探偵より主人公の省吾より、一番存在感があり印象に残ったのは、大学から身を投げて死んだホームレスの老人だった。

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暗黒星雲のかなたに


2018年09月29日 読了
 地球の大学に留学していたネフェロス星の貴族の息子・バイロンは、突然父を反逆者として殺され、バイロン自身も狙われる。
惑星ローディアに逃げたバイロンは、政略結婚されようとしていたローディア総督の娘アーテミシアと共に追われる身となる。

 今でこそありふれた設定と言ってもいいが、私が生まれる前に発行された本ということを思えば少しも古臭くない分、かえって新鮮に感じる。
宇宙をまたにかけた逃亡の末、知恵によって身を守り、裏切り者を突き止める。
宇宙船の設定や政治に関しては興味をそそるものだったし、充分楽しめた。

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ロスト・シンボル 下


2018年09月17日 読了
 今夜中に謎を解かないと旧友の命がない。
ラングドンはピーターの妹キャサリンと、フリーメイソン最後の謎を解こうと知恵を絞る。

 謎や隠し文字、隠喩や暗号といった、興味をそそることがたくさん出てきて面白いが、やはり宗教的な蘊蓄にはついていけない。
ちょっとした疑問が湧いても、そのせいで知らなくてもいいやと投げやりになってしまう。
そのため大げさに走り回ったのにこんなものだったのかと思わずにはいられない。

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ロスト・シンボル 上


2018年09月17日 読了
 キリストの聖杯をめぐる事件後、ハーヴァード大で教鞭を執る生活を送っていたラングドンに、旧友から突然に講演の依頼が入る。
会場に駆け付けたラングドンだが、そこで見たのは、空を指さす旧友の手首だった。

 相変わらずのラングドンだが、今度も強引に事件に巻き込まれる。
しかも手首を見つけさせた犯人は、フリーメイソンの謎を解かないと旧友・ピーターの命はないと脅す。しかたなく謎解きに走るラングドンがやっぱり危険な目にあう様はスピーディーで目が離せないが、宗教上の話はちっとも分からず退屈だった。
前作もそうだが、キリスト教の基礎知識がないと謎も暗黙の了解もタブーも気づけない。
だから発見も思いつきもヒラメキもなくて退屈に感じる。

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師弟の祈り 僕僕先生: 旅路の果てに


2018年09月12日 読了
 王弁は突然現代日本へと飛ばされた。
そこで、僕僕先生との強い絆を持った人と出会う。
一方、神仙と人との争いが起ころうとしている長安。
二人はまた出会うことができるのか、そして神仙と人との戦いは。

 前作からいきなりつまらなくなった。
読んでいても興味がわかず、状況も想像できない。
何が言いたいのか、どうしたいのか全く伝わらないまま、終わりも中途半端に途切れて終わり、結局なんだったの?とすっきりしないシリーズ完結。
これなら<旅路の果てに>はいらなかった。

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辞令


2018年09月07日 読了
 大手エレクトロニクスメーカーの宣伝部副部長・広岡修平に、突然辞令が出た。
しかも降格としか思えない左遷。
広岡は、不審に思い調べ始める。

 淡々と語られるために読みやすいが、その分感情移入はしない。
サラリーマンの宿命である辞令の裏には、様々な駆け引きと地盤固め、裏工作、下準備があり、そのどれに与するか、誰を信用するかにかかっている。
辞令で始まり辞令で終わる。
出世や会社への執着がない人にとってはくだらない事だが、人事とは人生を左右する大事でもある。

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密告はうたう


2018年09月05日 読了
 警視庁人事一課監察係の佐良は、かつて一緒に捜査を行っていた皆口の監察を任された。
行動確認のため尾行を続ける日々に、皆口の婚約者が死んだ事件とのかかわりを見つける佐良。

 監察としての任務の裏に、同僚が死んだ事件がまだ解決していないという因縁がつながり、捜査に力が入る佐良。
しかし、緊張感が増し関係者が増え、事が明らかになっていく割に、それをもたらした原因がいまいち重要なイメージがない。
不幸な結果になる者が多い事件なのに、その根本が曖昧では、空回りして勝手に深刻がって走り回っているようにしか見えなかった。

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任侠浴場


2018年09月01日 読了
 東京のとある組、オヤジが妙に人たらしなため、人望も人脈も大きく広い。
そんなオヤジのところに、またある悩みが持ち込まれた。

 刑事モノで登場する甘糟もまたちょっと顔を出したり、ほわっと笑わせるところもある。
ヤクザのくせにつぶれかけた銭湯を立て直すために働くという変わった話だけど、あまり現実離れしていないせいか、さらさらと気持ちよく読める。
ちょっと都合がよすぎるくらいに進むところはいつもの通り。

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任侠浴場 (単行本) [ 今野敏 ]
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