あずかりやさん 桐島くんの青春


2017年05月12日 読了
 とある商店街にひっそり営業しているあずかりやさん「さとう」。
1日100円でなんでも預かってくれる。
今回は店主の桐島のこれまでの話がメイン。

 メインといいながら、桐島の話より店にある物たちの話がメインのよう。
オルゴールの話はただ一つ心に残るが、他はいまいちで、読み終えてもすっきりせず、後味もなく、すぐに忘れてしまう。

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先生のお庭番


2017年05月11日 読了
 長崎の出島。
そこで医者として任務に就いていたシーボルトの薬草園をまかされることになった熊吉。
そこで知恵と努力でなんとか園丁としての力をつけていき、混乱の時代を出島で経験することになる。

 偶然シーボルトの話が続いたが、こちらの方が断然おもしろい。
シーボルトと妻の滝の性格の違いも興味深い。
そして地図の事件。
同じ部分をきりとった話を比較していくのも面白かった。

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オランダ宿の娘


2017年05月09日 読了
 オランダから幕府への使節団が泊まる宿「長崎屋」。
そこの娘である”るん”と美鶴は、自分たちの家を誇りに思い、オランダからの使節達との交流を楽しんでいた。
 ある時、シーボルトの求めた品をめぐり、何人もを巻き込む大事件となっていった。

 淡々と出来事を並べ、感情を押し込めるような文体で大きな出来事をなぞる。
だが、辛さゆえに感情を押し殺しているというよりはうわべをなぞっているように感じ、教科書のような、どこに重点を置いているのかわかりにくいものになっていた。結局あまり印象に残らないものになり、すぐに忘れてしまう。

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夢幻花


2017年05月05日 読了
 花を愛でて暮らしていた老人が殺された。
第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えていた鉢植えに気付く。
それは祖父が生前、「特別な花」だと言っていた鉢だった。

 どこへたどり着くのか予想できず、朝顔の不思議さにも興味がわく。
知り合いとなった蒼太の兄・要介の胡散臭さには違和感があったけど、面白く読めた。負の遺産を引き受ける者たちの、世代を超えた生き様。

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実さえ花さえ


2017年04月25日 読了
 種苗屋「なずな屋」を営む、新次とおりん夫婦。
植物を愛でるのがなによりの生きがいである新次と、お針や手習いの師匠をしていたおりんが、互いを思いやり優しく懸命に生きる姿を描く。

 すらすらと読める割にじっくりと考えさせる内容で、読み終えると今に続く「花」の登場にほっこりとし、また人の死にしんみりする。

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奇縁七景


2017年04月22日 読了
 ジワリとしみてくる恐怖を描く七つの話。
子供たちが出会った気味の悪い老婆、占いを一切信じないと公言したおかげで占いに苦しめられた男、一つの事だけに執着して視野が狭くなったおかげで様々なものを失った主婦、そして個別の話を少しづつ繋げた最終話。

 ホラーとしての色が強い話から、だんだん柔らかになるために読後感は緩和されていく。
それぞれは強い嫌悪や恐怖を感じさせるが、不思議と読み終えたら消えている。
すっかり忘れるくらいの軽さ。

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みやこさわぎ (お蔦さんの神楽坂日記)


2017年04月19日 読了
 高校生になった滝本望は、祖母のお蔦さんと暮らしている。
神楽坂の若手芸妓・都姐さんが結婚を機に芸妓を辞めると言い、あいさつに来た。
ところが、一方的に婚約解消を言い捨て、都姐さんは姿を消す。

 お蔦さんの周りには相変わらず色んな人がやってくる。
今回も都姐さんの他に、3つ後の男の子を置いて家を出たという主婦、地元の有名な画伯が若い頃に書いた絵で起こった相続トラブルなど、身近でやっかいな出来事がたくさん起こる。いつ自分の周りで起こってもいいようなことばかりで、思わず神妙に考えてしまう。
お蔦さんの采配には毎度感嘆してしまう。

立川忍びより


2017年04月17日 読了
 ブラック企業からやっとのことで逃げ出し、実家の中華料理店の2階で引き篭もっていた主人公の大倉多聞。
 ある日借金の形に見合いをさせられ、相手の家に住み込むことになる。
それだけでも充分おかしなことだけど、なんと相手の家は現代に残る忍びの家だった。

 忍者や吸血鬼、アイドルまで出てくるしっちゃかめっちゃかなお話。
子供の好きなアイテムてんこ盛りといった感じで、細かいことは気にしないほうがいい。
その分「僕僕先生」にあったような心の機微を感じる要素は少ないのでちょっと物足りない。

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悪意


2017年04月15日 読了
 人気作家が自宅で殺された。第一発見者は妻と作家の古くからの友人。
犯人は割とすぐに逮捕されるが、動機だけは真実を話さない犯人に、「新参者」シリーズの加賀は、犯人が小学生だった頃までさかのぼって調べていく。

 犯行そのものより動機に重点を置き、犯人の心理をじっくりと追っていくのだが、実に回りくどい。
小さな頃から染み付いた考え方が、執念深く周到な犯行につながったことを証明するために、最後は様々な角度から犯人を見ていくが、なんだか今一つ追い詰めるようなスピードも圧力も感じない。きっかけも大きな出来事ではあるのに、のんびりしてカーテン一枚向こうの出来事のような文章でふわふわした感触になっていた。

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青光の街


2017年04月11日 読了
 本業は小説家だけど、担当編集者だった高橋が突然立ち上げた探偵事務所の所長を兼業することになったユナ。
 旧友の秋子から、『ユナ、助けて』とメールが届いて驚くユナは、プロの探偵たちに助けられながら秋子を探すことにした。

 そして巷では、クリスマス用の電飾が置かれた、一見何の接点もない殺人が、連続して起きていた。

 接点がないように見えていた殺人の、つながりを探していくのは楽しかったが、登場人物が多く、重要なのに個性があまり出てこない人物もいて最後までつかめずにいた。結局どんな関係があったのか、所々見直してもわからない。
そして真犯人の計画した交換殺人も、なんだか犯人の人格と疾病に隠れていまいち解決されていないままなのですっきりしない。
小説家で探偵事務所の所長という立場が、とても興味深いのに印象が薄いので残念。