2017年11月30日 読了
この世とあの世の狭間にある黄泉坂で、迷える魂を遺恨なく送るために働いている彩葉と速人。
死んでしまってからも人に喜んでもらおうと坂の下で居酒屋をひらいた死人のおかげで、死人は増えているのに迷う者は減ってきていた。
生きていた頃の強い迷いをぬぐい、あの世へと導く二人の話というより、後悔を抱える死人がメイン。
ちょっと面白そうな人もいたけど、中途半端なまま終わったようなものもあり、消化不良な後味が残る。
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読書と編み物の記録
2017年11月30日 読了
この世とあの世の狭間にある黄泉坂で、迷える魂を遺恨なく送るために働いている彩葉と速人。
死んでしまってからも人に喜んでもらおうと坂の下で居酒屋をひらいた死人のおかげで、死人は増えているのに迷う者は減ってきていた。
生きていた頃の強い迷いをぬぐい、あの世へと導く二人の話というより、後悔を抱える死人がメイン。
ちょっと面白そうな人もいたけど、中途半端なまま終わったようなものもあり、消化不良な後味が残る。
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2017年11月28日 読了
前作『玉依姫』と同じ頃、八咫烏の郷では何が起こっていたのか。
荒れた山神に振り回される若宮は、金烏としての記憶がない事に悩み、郷の未来に悩む。そしてついに、猿の襲撃が始まる。
話が進むにつれ、だんだん細かいところも思い出してくる。
100年まえ、猿と烏の間になにがあったのか。
参謀にまで上り詰めた雪哉の変わりようが怖かったが、若宮と浜木綿の関係にほっとさせられた。
ファンタジーだと思っていたら歴史的な側面も見えてきて、どんどん混乱させられて引き込まれていく。結末がもう少し物足りないと思ったのは、まだこの物語を「読み足りない」と思ったからか。
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2017年11月22日 読了
本阿弥光悦からの誘いを断り、俵屋の主人となった伊年。
名を宗達と変え、妻を娶り、店はますます繁盛する。
そんな折、ふらりと現れた公卿の烏丸光広によって、宗達はさらに美の奥地へと引き込まれていく。
宗達の絵の力が益々冴える。手がける絵に衰えはなく、亡くなってからも嫉妬さえもかすれてしまうほどの力を見せる。時々入る時代考察も、教科書にもこんな風に書いてあったらさぞ興味をそそるだろうという書き方で、話の流れを少しも損なわない。俵屋宗達に興味を向かせるには充分な本だった。益々知りたくなった。
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2017年11月17日 読了
2016年第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作。
お金に困っている人を助けたいとメガバンクに就職した良太。しかし実状に失望して退職。そんな時、兄の会社がつぶれそうだということを知り、その過程で『黒女神』と呼ばれる株のエキスパートと出会う。
難しい株や金融の話かと思っていたらそんなことはない。
困っている人の大切なものを投げ出せるかを試し、約束を守った人は必ず助けられている。
『黒女神』の茜がとても印象的なキャラクターだけど、決して苦労知らずの小娘ではないし、良太にも茜にも心を寄せることができる。
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2017年11月13日 読了
バチカン美術館にマリア様が現れて予言をするという噂を調べるために美術館に泊まり込む平賀とロベルト。
その頃、街では十字路に描かれた魔法陣から悪魔を召喚するという事件がいくつも起こっていた。
番外編といった感じだが、平賀とロベルトの調査の様子がちょくちょく入る割には重要でもなく、27頭の象事件は解決はするがいまいち納得もいかず、ばらばらになったままフェードアウトといった終わり方ですっきりしない。
結局どうしたかったのかわからない。
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2017年11月11日 読了
大阪にある居酒屋「二歩」。生稲怜花はそこで、10年まえの病の後遺症で盲目となった母と、二人を支えてくれた育ての父と暮らしていた。
ある日、母の失明は薬害のせいだと言う記者がやって来る。
まだ認可されていない薬を巡り、命を優先して与えた薬に対して後遺症が出た時、様々な立場の人がどう考え、どう動くか。
前半は良くある話で退屈。やっと気が乗ってきたのは最後の100ページほど。
10年まえ何があったのかが少しづつわかってきてから。
最後はこんな解決法もあるのかと思わせた。清濁まるごと飲み込んでしまう大物が頼もしく思えてくる。ただでは起きないのならそれでいいかと思える始末が以外にも心地よい。
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2017年11月08日 読了
突然、嫁ぎ先から離縁されて実家に戻った岡島雪江。
身を立てる方法として、筆法指南所(書道教室)を始めるが、個性の強い門人や、見た目は良いがどこか頼りない奥祐筆をしている弟、さらには大酒飲みの師匠・巻菱湖に囲まれ、存外忙しい日々を送っていた。
そんな時、元夫が大きな企てに関係していることを知らされ。。
書家として生きる決意をした雪江が、新しく出会う出来事に心を揺さぶられる様子が強く感じられて、息が付けなくなるような箇所がいくつもある。
ままならぬことに憤りつつ諦めていても、最後のサプライズでみんな吹き飛んだ。雪江が書に向かう時のように、気を静め心を静める時を持ちたいと思った。
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2017年11月02日 読了
第二回創元ファンタジイ新人賞受賞作。
妻を事故で失い、すべての気力を失ったミュージシャンは、見つかったわずかな遺骨と共に、妻の故郷へ向かう。
そこは、神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。100年まえの女王が島を訪れた植物学者と恋に落ち、苦悩の末その身を二つに分けたという言い伝えがある島だった。
美しいファンタジー。長い話にも関わらず、少しも飽きずにあっという間に読んだ。神の使いである宝石鳥も、その民族衣装も、舞も、そこを統べる女王も、たっぷりの美しい表現が満載でうっとりする。ただ、最後がなんだか密度が薄い感じで物足りなかった。女王となった者の様子の描写が少ないため、様子が浮かびにくく、理解するのに何度か読み直した。
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2017年10月25日 読了
扇屋「俵屋」の後継ぎとして養子になった伊年は、将来店を継ぐための修行などお構いなしにひたすら絵を描いていた。
ある日、幼馴染に頼まれ描いた平家納経の表紙絵の修繕を書の天才、本阿弥光悦が気に入り、料紙と下絵と文字の3つの美が一つとなった書物を作りたいと打診される。
後に天才絵師と称されることになる俵屋伊年の若い頃の話。
我を忘れるほど惹きつけられるものに出逢い、のめり込み、モノにするには、天才といえども簡単ではなく、伊年が心を動かされたり焦ったりする様が目の前にいるかのように感じられて興味をそそる。
所々入る現代との比較や当時の文化の説明なども、テンポを途切れさせずにうまく配置され、するりと頭に入って来る。
次の章も途切れずに読みたかった。
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2017年10月20日 読了
東京の小さな新聞社で記者をしている亮一は、「天皇重体」との情報を掴む。
これまで国民にはその姿も人柄も秘されていた天皇の様子が初めて庶民にさらされる。そして崩御の後、東京に神宮を建てるという計画が立てられた。
150年後に完成する明治神宮を作る計画が動き出す。
なんとも気の長い話が、実は今も続いているのかと思うと見に行きたくなった。
天皇の人柄など知る機会もそうないのに、なぜ人々は国の象徴として認め、崇めるのか。
神宮を作る話よりも、天皇の話がもう少し知りたいと思った。
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