祭火小夜の後悔


2018年12月01日 読了
 第25回日本ホラー小説大賞〈大賞〉および〈読者賞〉受賞作
ちょっと内気でミステリアスな少女・祭火小夜は、怪奇現象に詳しかった。
下ばかり見ながら歩くのが癖の教師は、ある日旧校舎で不思議なモノに出会う。

 前半の短編は、不可思議なモノと出会った人たちがそれらをやり過ごす方法を小夜から教えてもらう。その奇妙さが恐ろしいが、小夜のラノベっぽい登場が和らげる。
後半は小夜の兄に関する大きな賭けの行動だが、こちらはちょっとありふれていて、前半の異彩さがほとんどない。進行の予測もつき、長編のわりに充実感がなかった。

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戒名探偵 卒塔婆くん


2018年11月30日 読了
 寺の次男で、家業に興味のない春馬は、横暴な兄にこき使われながらも毎日平凡な高校生活を送っていた。
しかし彼には、妙に仏教に詳しい知り合いがいた。

 兄から頼まれた無理難題を、その友人はいとも簡単に解き明かす。
外場くんの宗教講義は私にはつまらないが、複雑で難解な宗教を不思議なほど簡単に説明する。
兄と幼馴染があまりにもな性格なせいか、外場の異様さが薄れて普通すら見えてくるため、なぜか話に耳を傾けてしまう。
 前作がありそうな雰囲気だったけど、読んでいてもきっと覚えてないな。

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雲上雲下


2018年11月24日 読了
 いつからいるのか、枯れもせず、動けず、ただじっと毎日を過ごしていた草のところに、ある日子狐がやって来る。山姥も姿を現し、やがて草の語る『話』に耳を傾ける。

 草が語る話は、どれも知っている昔話。
子狐の寝物語に語るうち、だんだん現実と交差していき、草の下にやって来る旅人も登場人物となり。現実となる。
不思議な昔話だと思っていたら、予想外の展開に。
神は人が作り出し、人から忘れられれば消えてゆく。
神ですらも、予見できず抗えないことがあるという。

 今までの朝井まかてにはない分野だった。

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はしからはしまで: みとや・お瑛仕入帖


2018年11月23日 読了
 店内どれも三十八文。
兄妹で営む『みとや』だったが、突然、兄の長太郎がフグにあたって死んでしまう。
一人になっても食べていくためには店を続けなければならないと、妹のお瑛は、兄の廻っていた仕入先を巡ることにした。兄の話を聞かせてもらいながら。

 主要人物の一人が死ぬというのは、とても喪失感が大きい。
それでも仲間に恵まれたお瑛の姿が頼もしく、知らなかった兄の一面も見れて新鮮だった。

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ミステリー・アリーナ


2018年11月16日 読了
 毎年年末に行われる国民的娯楽番組《推理闘技場》。
新たにできた法律を支える文字通り命を賭けた戦い。
10回目の今回は、キャリーオーバーで20億円の賞金という、知を尽くして生き残る番組に予選を勝ち残ったのは、ミステリーオタクたち。
まだストーリーが読み上げきれてない時から一度きりの回答権を使いながら推理していく。

 死ぬか20億かの選択で、ハラハラしながら読み進める。
でもだんだん胡散臭くなってくる。
それでもカラクリがわからず、どうなってしまうのかと興味をそそられるばかりで、予想もつかない。
残酷な話ではあるけど突飛すぎて感情移入もできず、そのおかげで壮大な仕掛けのあるミステリーを楽しめた。

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サーチライトと誘蛾灯


2018年11月11日 読了
 公園の治安維持のため見回りをしていたボランティアの吉森は、そこでテントを張ろうとしている怪しい人物と出会う。
その人物は魞沢と名乗り、どうにも会話がかみ合わない。
 そして見つけた他殺体と周りの状況から、魞沢は一つの答えを導き出した。

 虫を探してあちこち旅をしている魞沢が、そこで起こる事件に巻き込まれ、とぼけたやり取りから真実を見つけ出す。
魞沢の軽さがトントンと物語を進め、重苦しい雰囲気を作らない。
どんなに苦しい状況に置かれた人達の中にいても変わらないため、読んでいても苦しい思いをせずに済む。

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死神刑事


2018年11月07日 読了
 「警視庁の方から来ました」
詐欺が良く使う口癖でやって来る『死神』。怪しすぎるのに、優秀。

無罪が確定した事件の再捜査をするためやってきたその男は、『死神』と噂されていた。そして『死神』と一緒に捜査した警察官はもう行き場がないと。

 警察が捜査して捕まえた犯人が無罪となるということは、警察の失敗ということ。それを再捜査するのは警察にとっては負けで、『死神』は疎まれていた。
しかしその男は、事件にかかわった刑事一人を相棒に選び、再捜査したあげく置き土産までおいていく。
『笑うセールスマン』的なブラックユーモアが面白い。
悪い噂の割に、誰も不幸にはなってないし、事件の真犯人も見つかる。
サクサク読める軽い文体で痛快な短編集。

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悪玉伝


2018年11月01日 読了
 大坂の炭問屋・木津屋の主の吉兵衛は、家業を放って放蕩を尽くしていたが、ある日兄の訃報が伝えられた。
すぐさま実家へ向かい、我が物顔の番頭を抑え葬儀の手はずを整えるが、それがお家騒動にまで発展してしまう。

 最初から不穏な気配が続き、ずっと胸の悪くなるような出来事で一向に解決しない。最後には罪人となってしまう吉兵衛。
主人公の吉兵衛の視点からは悪人には見えず、混乱させられた。
辰巳屋騒動と言えば有名なようだが、ちっとも知らなかったせいであまり熱中できず、感情移入もできなかった。
お瑠璃の様子がもっと知りたい。

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半端者—はんぱもん—


2018年10月28日 読了
 ススキノシリーズ『探偵はバーにいる』の俺が、まだ大学生だった頃の話。
学校にはほとんど行かず、3件の家庭教師と英語のゼミ、それに高田に習い始めた護身術の他は毎晩飲み歩いていただけの俺が、ある日であったフィリピン女性に恋をした。

 まだ探偵を始める前、何をしたいとも思わず、ただその日の金を稼ぎ、飲み歩いていた俺がだらだらと暮らしている様子がかかれているため、本当にただだらだらと続く。
フィリピン女性との恋も、終わりに差し掛かってやっと出てくるような、メインではない話。
この後、果たして俺はどんな思いがあってススキノで探偵を始めるのか。
その決意までは書かれていなかった。

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消えた少年


2018年10月24日 読了
 学校ではわざと悪い点を取ったりする問題児だが、映画好きで頭のいい少年・翔一と知り合った俺。
しかし、翔一の親友が惨殺死体で発見され、翔一も行方不明となった。
俺は、翔一の担任の春子に頼まれて彼を探すことにした。

 殺された少年の状態のひどさに息をのみ、これは絶対ヤクザの仕業だと思わせながらも、いくら探してもつながってこない。
最後にわかる理由が恐ろしすぎて、久しぶりのハードボイルドに飲み込まれた。
映画の印象が強いため、大泉洋の顔がどうしても浮かんでくる。
そのおかげで、痛い場面でもちょっと気が抜ける緩さがあって面白かった。

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