ひかりの魔女


2019年04月01日 読了
 浪人生の真崎光一の住む家に同居することになったばあちゃんは、もう八十五くらい。でも頭も体もシャキッとしていて、地域の人たちにやたらと尊敬されていた。昔、書道教室をしていたせいだというばあちゃんだけど、光一は他にも理由があると気づく。

 人を誉め、気持ちよくさせるとこの天才なばあちゃん。
心を亡くしそうな人たちに、そっと気づかれないように嘘をついて癒し、不自然で必要以上なくらいに尊敬されていた。
一見、できた人のように思えるが、私には奇妙に映った。
安心させる嘘とか、気を奮い立たせる嘘ならいいが、わざと腰をかがめて痛いふりをしたりする嘘も含まれるから。
結局いい方に流れてはいるものの、誰もが自分が一番だと思わせるのは、詐欺師のよう。
同じ魔女でも『西の魔女が死んだ』とは大違い。
嫌悪感の方が大きかった。

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有楽斎の戦


2019年03月29日 読了
 織田信長の弟でありながら戦が嫌いで、できれば茶の道で静かに生きたいと願う織田源五郎。
彼はどうやって数々の戦を生き抜いたのか。

 たいした手柄も上げられず、戦とは関係ないところで怪我をする源五郎。
そんな彼が戦に駆り出されて毎回弱気になりながらも、すんでのところで助けられるところが描かれる。余生は静かに茶をたてながら過ごし、息子からの提案に嬉々とする有楽斎の様子が微笑ましい。
でも戦ばかりの話は私には少しつまらなかった。

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under the bridge


2019年03月29日 読了
 マンハッタンで立てこもり事件が発生した。
ニューヨーク緊急出動部隊のブラウン率いる班が突入し、無事人質は保護され、犯人は射殺された。
ところが、NYに潜伏中の探偵・濱崎は、人質が旧知のヤクザの情婦だったことを知り、これには裏があると思い探ることにする。

 ハードボイルド小説『over the edge』の続篇。
前作の話は覚えていないけど、登場人物などの雰囲気は残っていた。
ブラウンと濱崎の、気に食わないけど信用してるというハードボイルド定番のやりとりが、重くなり過ぎずテンポよく進んでいくので読みやすい。

製薬業界の闇


2019年03月26日 読了
 大手製薬会社ファイザーは、製薬企業ファルマシア社を買収する。
著者のロストは、ファイザーの不正に気付き、苦言を呈するが、仕事を取り上げられてしまう。
悩むロストはマスコミや講演を通じて訴え続ける。

 内部告発をしたロストの、ファイザーとの戦いの行方を暴露した本。
ロストの根拠のない自信が次々と大きな行動を起こさせ、周りも巻き込んでいく。
ロスト側の一方的な告白ですべて綴られている。
成り行きも説明が不十分で所々意味が解らず読み返したり、都合のいい見方をしていると思われる個所がいくつも出てくるので、途中でうんざりしてくる。

キリングクラブ


2019年03月21日 読了
 ジムで知り合った千沙に誘われ、「キリングクラブ」という店で給仕をすることになった藍子。
そこは、人口の1%は存在すると言われるサイコパスの中でも特に成功したサイコパス達が集まるクラブ。その会員が、連続して殺害されるという事件が起こる。

 何事にもさして感情を揺さぶられることがなさそうな藍子。
連続する殺人の犯人を追う立場になっても淡々としている藍子の本性は、最後になるまで明かされない。すっかり騙された。
殺人にすら興味を示さないクラブ会員の様子に、知恵ものの藍子すら翻弄されていると知ってさらにうすら寒い思いがした。
後味の悪さはあるが、イヤミスとは少し違って嫌悪感はない。

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グラスバードは還らない


2019年03月19日 読了
 大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、マリアと漣は不動産王ヒュー・サンドフォードが関係していることを掴む。
サンドフォート所有のタワーに乗り込んだマリアは、そこで爆発事故に巻き込まれてしまう。

 シリーズ1作目がとても印象深かったため、2作目の記憶がない。
それらに登場したジェリーフィッシュや青いバラも登場するのに、バラの印象がないのが残念だった。
今回も予想を裏切られるが、グラスバードがアルビノだったとか遺伝子操作で特殊な外見だったとかの、もうちょっと「特別」な感じがほしかった。

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爽年


2019年03月14日 読了
 シリーズ完結となる本作。
娼夫として7年が過ぎ、リョウはこれからの事を考え始めていた。
女性の複雑さにはまだ追いつかないと思いながら、これまでの印象的な客たちの話をいくつか。

 様々な趣向の客たちの心を見つけてきたリョウだが、初めて自分の家族を作る決心もする。
娼夫の話だけど、内容はとても精神的。

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後宮の烏


2019年03月12日 読了
 後宮の奥には、「烏妃」と呼ばれる特別な妃が住んでいる。
普通の妃とは違い、夜伽はせず、対価と引き換えに望みをかなえるという。
 ある夜、帝である高峻が烏妃の下へ訪れ、翡翠の耳飾りに憑いた鬼の正体を知りたいと言う。

 幼くして連れてこられ、誰からも顧みられず、侍女もおらず、ただ一人の碑女だけを使うその妃。
その少女は例にもれず孤独で、不思議な話し方で、人を寄せ付けない。
『図書館の魔女』に似た雰囲気。
それぞれの背景もそれ相応に過酷で、意外性はないが期待通りの世界に入り込める。

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スノウ・エンジェル


2019年03月09日 読了
 刑事だった神西明は、9年前に相棒を殺され、怒りの余り5人を殺して逃げた。
すでに戸籍では死んだことになっている神西に、かつての上司から「女麻薬取締官が潜入捜査をする人物を探している」と言われて、協力することに。

 薬物の売人に信用され、やがて元締めにたどり着いた頃、予想外の裏切りに合う。
結論はありふれたものだったが、そこまでは引き込まれる。
ただ、気にかけるべき人物は他に幾人かいるにもかかわらず、不思議な物言いをしていた伊佐のことは曖昧なままだったのが、気になってしょうがない。

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草々不一


2019年03月04日 読了
 江戸。兄がいたために奉公に出、商人としての面白みを知り始めた頃になって跡継ぎとして連れ戻された真吾。武士としてお役を頂くために日々努力してきたが、、。分不相応な格の家に婿入りすると、妻から3つの約束をさせられる。
 など、江戸で生きる人たちの生き様をいくつか。

 武士は文字など読めなくともいいと意地を張っていた男が、妻が残した文読みたさに子供たちに交じって手習いに通う。
最後がほっこりする話がいくつかあり、それを、合間の他愛もない物語が引き立てる。
 意地を張ってもそれを大らかに受け止める人がいるのは、傍から見ても微笑ましい。時間をかけてじっくり読むのに向いている。

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草々不一 [ 朝井 まかて ]
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