片翼の折鶴


2018年12月19日 読了
 ある日病院に連れてこられた救急患者は、極度の貧血だった。
しかし、点滴で充分な補充をしたにもかかわらず、一向に改善しない。
そして患者は昔、瀉血を繰り返していた。
 おかしな現象と思われる症状を見て、不思議と原因を言い当てる医師・西丸は、”臨床探偵”と渾名されていた。

 西丸の大学時代を描いた「消えた脳病変」が、第十一回ミステリーズ!新人賞受賞作。

 患者を信じたいが症状からは納得できないと悩む若い医師たちの様子を眺めながら、真相を言い当てるまさしく『探偵』。
その根拠ももちろんなるほどと思わせ、こちらの未熟さを静かにフォローしてくれる。存在感があまりないように書かれているのが、今までにない探偵。

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瑕疵借り


2018年12月13日 読了
 普通ではない死に方をした人が住んでいた家は、事故物件や瑕疵物件として、告知義務が生じる。
そんな家に住む藤崎は、オーナーや不動産会社から依頼を受けて瑕疵を洗い流すことを生業としていた。

 表情にとぼしく、やせた風貌の藤崎が、瑕疵物件に住むのはなぜか。
原発処理の仕事をしていた男の死、失踪した女性、謎の自殺。
様々な理由で死んだ人たちと、それにかかわる人たちの遺恨をも洗い流す藤崎の様子を見るうち、藤崎自身に興味が湧いてくる。
ただ人死にが出たというだけではない、あらゆる人の生き様の結果の死という厚みを感じさせる。

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回想のぬいぐるみ警部


2018年12月11日 読了
 ふわふわでもこもこなぬいぐるみを愛する美貌の刑事・音無美紀。
その事件にぬいぐるみが関わっていたら居ても立っても居られない。
そんな趣味を隠せていると思っているのは本人だけで、周りは薄々気づいていく。
 そしてぬいぐるみを眺めながらついでに事件も解決していく。

 個性的ではある。そして事件もそれなりに込み入っていて納得できる。
でもなぜか薄っぺらく、次の章へ行けば忘れてしまう。
事件やぬいぐるみや音無よりも、ほかの要素が多すぎるのかもしれない。

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白銀の巫女


2018年12月07日 読了
 呼び起されてしまった過去の化け物に追われながら、もとコンスル帝国軍人率いる侵略軍にも追われるエンスたち。
そこで1500年前にかけられた結び目の呪いを見つけ、意味を見出そうとする。

 大群と闘いながら、1500年前の呪いを紐解こうと奮闘するエンスたち。
1作目の出来事を忘れてしまっている部分も多かったが、やっと本陣に迫るというところで終わってしまう。
3作目が出たらすべて読み返す気力があるかどうか。
ともあれ、エンスやリコとまた出会えたことがとてもうれしかった。

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別れの霊祠 溝猫長屋 祠之怪


2018年12月04日 読了
 お多恵ちゃんが成仏したと思われ、祠のお参りをしていた4人にもそれぞれ奉公先や修行先が決まり、ほっとした大家の吉兵衛。
大抵の事ではもう驚かなくなっていたが、今度はお紺の縁談が持ち上がったと聞いて息が止まるほど驚いた。
 しかしやはりお紺の相手、並の男ではないようで。

 これで皆との幽霊騒ぎも終わりかと思うと寂しくなる。
それぞれが向かう先は全く違う道だけど、4人はやっぱりしぶとい。
頼もしい働きでお紺の縁談相手をさぐり、自身の能力とも渡り合う。
変わらない4人がうれしい。

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祭火小夜の後悔


2018年12月01日 読了
 第25回日本ホラー小説大賞〈大賞〉および〈読者賞〉受賞作
ちょっと内気でミステリアスな少女・祭火小夜は、怪奇現象に詳しかった。
下ばかり見ながら歩くのが癖の教師は、ある日旧校舎で不思議なモノに出会う。

 前半の短編は、不可思議なモノと出会った人たちがそれらをやり過ごす方法を小夜から教えてもらう。その奇妙さが恐ろしいが、小夜のラノベっぽい登場が和らげる。
後半は小夜の兄に関する大きな賭けの行動だが、こちらはちょっとありふれていて、前半の異彩さがほとんどない。進行の予測もつき、長編のわりに充実感がなかった。

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戒名探偵 卒塔婆くん


2018年11月30日 読了
 寺の次男で、家業に興味のない春馬は、横暴な兄にこき使われながらも毎日平凡な高校生活を送っていた。
しかし彼には、妙に仏教に詳しい知り合いがいた。

 兄から頼まれた無理難題を、その友人はいとも簡単に解き明かす。
外場くんの宗教講義は私にはつまらないが、複雑で難解な宗教を不思議なほど簡単に説明する。
兄と幼馴染があまりにもな性格なせいか、外場の異様さが薄れて普通すら見えてくるため、なぜか話に耳を傾けてしまう。
 前作がありそうな雰囲気だったけど、読んでいてもきっと覚えてないな。

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雲上雲下


2018年11月24日 読了
 いつからいるのか、枯れもせず、動けず、ただじっと毎日を過ごしていた草のところに、ある日子狐がやって来る。山姥も姿を現し、やがて草の語る『話』に耳を傾ける。

 草が語る話は、どれも知っている昔話。
子狐の寝物語に語るうち、だんだん現実と交差していき、草の下にやって来る旅人も登場人物となり。現実となる。
不思議な昔話だと思っていたら、予想外の展開に。
神は人が作り出し、人から忘れられれば消えてゆく。
神ですらも、予見できず抗えないことがあるという。

 今までの朝井まかてにはない分野だった。

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はしからはしまで: みとや・お瑛仕入帖


2018年11月23日 読了
 店内どれも三十八文。
兄妹で営む『みとや』だったが、突然、兄の長太郎がフグにあたって死んでしまう。
一人になっても食べていくためには店を続けなければならないと、妹のお瑛は、兄の廻っていた仕入先を巡ることにした。兄の話を聞かせてもらいながら。

 主要人物の一人が死ぬというのは、とても喪失感が大きい。
それでも仲間に恵まれたお瑛の姿が頼もしく、知らなかった兄の一面も見れて新鮮だった。

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ミステリー・アリーナ


2018年11月16日 読了
 毎年年末に行われる国民的娯楽番組《推理闘技場》。
新たにできた法律を支える文字通り命を賭けた戦い。
10回目の今回は、キャリーオーバーで20億円の賞金という、知を尽くして生き残る番組に予選を勝ち残ったのは、ミステリーオタクたち。
まだストーリーが読み上げきれてない時から一度きりの回答権を使いながら推理していく。

 死ぬか20億かの選択で、ハラハラしながら読み進める。
でもだんだん胡散臭くなってくる。
それでもカラクリがわからず、どうなってしまうのかと興味をそそられるばかりで、予想もつかない。
残酷な話ではあるけど突飛すぎて感情移入もできず、そのおかげで壮大な仕掛けのあるミステリーを楽しめた。

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ミステリー・アリーナ (ミステリー・リーグ) [ 深水黎一郎 ]
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